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不動産賃貸取引の電子契約が全面解禁へ!特徴や導入のメリットを解説

2017年にIT重説が解禁されて以降、不動産業界で求められてきたのが契約の完全電子化。社会実験を経て、ついに不動産賃貸取引における電子契約が全面解禁される日が目前に迫ってきました。しかし、電子化に対応できるか不安に思う不動産賃貸業者様も少なくないでしょう。

そこで本稿は、不動産賃貸事業者・オーナー・入居者のそれぞれの立場での不動産賃貸取引における電子契約の特徴や導入のメリットを解説します。自社や自店舗でスムーズに対応できるよう、事前に備えましょう。

電子契約とは

電子契約とは、これまで紙で交わしていた契約書に代わり、電子データで契約を交わすことを指します。ここでは、紙の契約書との違いや電子契約の法的効力、契約が実現する条件について確認しましょう。

書面による契約との違い

従来の書面契約では、紙に印刷された契約書へ署名・捺印をしたり、あらかじめ氏名が印字されている書類に押印したりすることで、本人の意思で契約したことを証します。これに対して、電子契約では契約書に直筆の署名をしたり判子を押したりすることはできません。代わりに用いられるのが電子署名です。

電子署名とは、電子文書(電子契約)に対して付与される署名のことであり、「誰がいつ、文書の内容に同意したのか」を明らかにするもの。電子署名法という法律に定められている下記の条文に基づいた署名が行われていれば、契約は成立したものと推定されます。つまりこの要件を満たせば、電子署名による契約書も書面のものと同様に、本人の意思によるものとして法的効力をもつのです。

”第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。”

電子契約が実現する条件

法的に有効な電子契約書を作成するためには、以下の条件がそろっていなければなりません。

  • 電子文書が改ざんされない
  • 署名が偽造できない
  • 署名の本人性が確認できる

つまり、契約以降に文書の内容が改変されず、かつ署名が本人のものであることを技術的に証明できることが求められています。そのために用いられているのがHash(ハッシュ)関数と公開鍵暗号方式と呼ばれる暗号技術です。

しかし、利用者がこれらの専門的な知識を理解する必要はありません。高い暗号技術によって上記の条件が満たされたサービスを利用すれば、簡単な操作をするだけで署名や契約をできるのが電子契約の特徴です。

ITANDIが提供する「電子契約くん」では、強固な電子署名技術を採用。これによって改ざんやなりすましを始めとした、あらゆるリスクを防ぐことが可能です。通信も常に暗号化されているため、盗聴やなりすましのリスクにも対応しています。

なお、電子契約を行うためには、契約当事者全員が電磁的方法による契約に同意している必要があります。したがって、入居者の意向によっては電子契約が可能な環境においても、書面による契約が行われることになるでしょう。

不動産賃貸取引における電子契約

2021年5月に「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(以下、デジタル改革関連法)」が可決、成立しました。

不動産業界のみならず、あらゆる業界におけるデジタル化を促進するために順次法改正がされており、今後改正が予定されているものの1つが宅建業法です。これによって、不動産賃貸取引における電子契約が全面的に解禁することが見込まれています。

2022年1月現在、電子契約によって契約が完結するものとは

2022年1月現在、不動産賃貸取引に関わるものの中で電子契約が可能、かつ契約業務のすべてをオンラインで完結できるものは以下のとおりです。

  • 賃貸物件の更新契約
  • 自ら貸主となって結ぶ賃貸借契約
  • 駐車場契約

上記3つの契約は、宅建業法上の制約を受けません。現行法において書面の交付義務がないため、電子契約で契約を完結できるのです。これらの契約については早期から電子契約を取り入れ、業務の効率化を図っている不動産賃貸業者も少なくありません。

今後は不動産賃貸取引に関する契約がすべて電子契約で完結

今後の法改正によって、不動産賃貸取引に関する契約はすべてオンラインで完結できるようになります。これまで、宅建業法によって定められていた重要事項説明書(35条書面)と不動産賃貸借契約書(37条書面)の書面による交付義務がなくなり、各書面上に必須とされていた宅地建物取引士のハンコも不要となるためです。

IT重説の解禁によって契約自体はオンライン上でできるようになったものの、書面の交付義務があったことによって完全な電子化ができていなかった不動産賃貸取引。中途半端に電子化されていた取引が、法改正によってオンライン完結できるようになります。

不動産賃貸取引の電子契約が全面解禁するのはいつ?

デジタル改革関連法に基づく改正法の多くは2021年9月1日に施行されました。しかし、宅建業法を含む一部の改正法の施行は2022年1月現在で未実施です。

一方で、同法に基づく改正法の施行は2021年5月19日の公布から1年以内とされています。したがって、遅くとも2022年5月18日までには不動産賃貸取引の電子契約が全面解禁される予定です。来るべきときに備えて、あらかじめ準備を進めておくようにしましょう。

不動産賃貸取引で電子契約を結ぶときの流れとは

不動産賃貸取引で電子契約を導入し、賃貸借契約に関する取引をすべて電子化するときの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. PDF化した重要事項説明書および契約書をアップロードする
  2. 電子契約書類に不動産賃貸業者が電子署名をする
  3. 入居者に電子契約書類をメールで送付する
  4. ビデオ会議システムを使って重要事項の説明を行う(IT重説)
  5. 入居者が電子署名をする
  6. 電子契約書類をサーバー保管する

あらかじめ書類をPDF化し、オンラインでのやり取りに慣れておけば、その後の流れはスムーズ。時間も手間も省けるため、これまでよりもスピーディーな契約や入居が可能になるでしょう。

不動産賃貸取引で電子契約を導入するメリット

不動産賃貸取引で電子契約を導入して契約が完全に電子化できれば、不動産賃貸業者・オーナー・入居者それぞれにメリットがあります。

不動産賃貸業者にとっての3つのメリット

不動産賃貸業者が電子契約を導入するメリットは大きく分けて以下の3つ。業務の効率化が図れて、かつコストが削減できるのであれば、導入しない手はないのではないでしょうか。

  • 業務の効率化
  • コスト削減(印刷代、紙代、郵送代、人件費など)
  • テレワークの促進

書類を作成してから郵送するまでには、細々とした業務が多数あります。書類上の不備を確認したり、入居者に署名・捺印をしてもらう箇所に付箋を立てたりという業務に一定の時間を割いている会社も少なくないでしょう。

入居者の記入事項に不備がある場合は、それだけで時間も手間も余計にかかってしまいます。電子契約を導入してこれらの手間が省ければ、業務効率化につながるだけでなく、従業員の働きやすさにもつながるでしょう。

書面による交付が不要となれば、コスト削減も見込めます。書類作成にともなう印刷代や紙代は、単価は安くても数が多くなればそれなりの金額になるもの。郵送が必要になれば郵送代、さらにはそれらの業務にあたるための人件費など、電子契約の導入有無でかかるコストの差は大きいです。

また、電子契約の導入はテレワークの促進にもつながります。契約に関する書類がすべて電子化されれば、入居者からの問い合わせに対しても自宅で対応できるだけでなく、契約業務そのものも場所を選びません。これまで店舗へ行くことが当たり前であった不動産賃貸業者も、電子契約やオンライン内見、セルフ内見システムを取り入れることによって、店舗へ行かずにテレワークができるようになるでしょう。

オーナーにとっての3つのメリット

賃貸物件を所有するオーナーにとっても以下のメリットがあります。

  • 書類への署名・捺印や郵送の手間が省ける
  • 賃料発生日を早められる
  • WEB手続きを好む入居者から選ばれる

署名や捺印のための郵送でのやりとりが省略できるのは、忙しいオーナーや遠方のオーナーにとってメリットになることは言うまでもありません。

郵送でのやりとりが発生しないため、最短で即日契約も可能です。よって、賃料の発生日も早められます。

また、入居者がほぼ同じスペックの2つの物件でどちらにしようか迷っていたとします。一方が電子契約に対応している物件で、もう一方がそうでなかったとしたら、どちらが選ばれるでしょうか。日頃からWEB手続きに慣れている入居者やWEB手続きを好む入居者からは、契約の手間が最小限である電子契約対応物件が選ばれるでしょう。

このようにオーナーの収益性を高めるという観点でも、電子契約の導入にはメリットがあるのです。

入居者にとっての3つのメリット

賃貸物件を借りる入居者にとってもメリットがある電子契約の導入。おもなメリットは、以下の3つです。

  • 契約のために直接店舗へ行く時間や手間が省ける
  • 書類への署名・捺印や郵送の手間が省ける
  • 契約日の日程調整がしやすくなる

時間に余裕がない人や遠方からお部屋探しをしようとしている人にとって喜ばれるであろう、電子契約の導入。これはオーナーと同様に入居者にとっても大きなメリットです。

これまで契約のために割いていた時間を短縮でき、交通費が不要になれば、お部屋探しがしやすくなります。仕事の休憩時間や隙間時間を使って契約をするなど、より気軽にお部屋探しをする人が増えるのではないでしょうか。

今後、入居者によっては電子契約の対応可否という点を不動産賃貸業者選びの基準の1つにする可能性があります。同じ物件を紹介している他社では電子契約が可能であるのに対して自社は対応できていない、という理由だけで入居者を逃してしまうことがないよう注意が必要です。

ITANDIが2021年6月に行った独自調査(※)では、全体の73%ものエンドユーザーが賃貸物件への入居契約時において、書面契約ではなく「電子契約を選択したい」と回答。この結果から、入居者側においても多くの人が電子契約の導入を望んでいることが明らかになりました。

関連プレスリリース:賃貸入居の契約時に「電子契約を選択したい」エンドユーザーは73%

※セルフ内見型賃貸サイト「OHEYAGO」Twitterアカウントのフォロワーに対し、賃貸借契約における電子契約の利用意向を調査するアンケートを実施。有効回答数:1,301

不動産賃貸取引で電子契約を導入するときの注意点

不動産賃貸取引で電子契約を導入するときは、おもに以下の点に注意が必要です。

  • 高い技術のサービスを利用すること
  • インターネット環境が整っていること
  • オーナーから理解を得る必要がある
  • 入居者の承諾を得ていること

前述のとおり、電子署名や契約書類の改ざんを防ぎ、契約者本人の署名であることを証明するためには、高い暗号技術をもったサービスの利用が不可欠です。さらに、契約書を電子化して入居者とのビデオ通話を含むやり取りを滞りなく行うためには、インターネット環境も整えておく必要があります。途中で映像や音声が乱れる状態では、IT重説をするのに必要な条件を満たしていません。

電子契約のシステム自体はそれほど難しい操作を必要としません。一方で、それを運用に組み込むには、オーナーからの理解を得なくては実現できないという点で注意が必要です。オーナーに理解してもらうためには、不動産賃貸業者側がオーナーの立場で電子契約の流れをわかりやすく説明し、メリットを的確に伝える必要があります。

また、入居者側においてもインターネット環境が整っていない人がいたり、高齢者を始めとしてインターネットに不慣れな人がいたりする可能性があります。あくまでも入居者の同意のもと、電子契約を行うようにしましょう。

あらかじめ電子契約に慣れておくことが重要

不動産取引の電子化にいつでも対応できるよう、あらかじめ電子契約に慣れておくことが重要です。インターネット環境を整備し、現時点で電子化が可能な契約については早めに電子化を導入してみてはいかがでしょうか。

また、事前に重要事項説明書や賃貸借契約書をPDF化しておくのもオススメです。従業員の方々にも早期から電子契約に慣れてもらうことで、いざ全面解禁されたときにも抵抗なく対応できるようになるでしょう。

「電子契約くん」を使って、電子契約をスムーズに!

不動産賃貸取引の電子契約には「電子契約くん」がオススメ。ITANDIが提供する「電子契約くん」は、不動産賃貸取引に特化した電子契約システムです。

契約書類の作成に時間を要した経験や、せっかくオンラインで重要事項説明をしても郵送に時間や手間がかかった経験、書類の保管場所や書類作成コストに困った経験がある不動産賃貸業者様は少なくないでしょう。電子契約くんを導入すれば、これらの困りごとを一挙解決。複雑な手順はなく、どなたでも簡単に導入できます。

さらに、「申込受付くん」を利用すれば入居者が入力する手間は1回。「申込受付くん」に入力したデータが「電子契約くん」に引き継がれ、書類に反映されます。万が一のデータ紛失時も自動バックアップ機能による復元ができるため安心。入力不備や改ざんのリスクを防ぐといった、あったら嬉しい機能がそろっています。

不動産賃貸業者様にとっても、入居者にとってもメリットが大きい「電子契約くん」。法改正を目前に控えた今、早めの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。